インディーズ・ポップスユニットm7のプロデューサーMarkのblogです

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東京大学物語

言わずと知れた江川達也最大のヒット作の映画版だが、江川氏自身が監督したものをCSでやっていたので観た。
Amazonのレビューでは酷評されているものの、僕としては結構面白かった。もちろん、原作が持っていた「村上の妄想ワールド全開」といった部分を期待した人にとってはがっかりなのはわかる。だが、この違いは漫画と映画という表現手法の違いを江川氏が理解していたからこそ生じたものだと思う。村上の妄想は文字という表現手段が使えた紙媒体の独特のものだったのである。

原作はスピリッツ連載時に読んでいたが、後半だんだんと冗長になり、僕自身が週刊誌を読まなくなったため最後までは読んでいない。9年に渡る長編連載であったにも関わらず、ラストは夢オチ、妄想オチ、ということでネット上では様々な批判が展開されているようだ。
だがしかし、長編漫画なんてそんなものである。9年にも渡る連載の開始時に、ラストシーンが構想にあった方が不自然だ。あったとしても、それは「人気があれば続くし人気が落ちれば打ち切り」という大人の事情によって簡単にくつがえされるわけだ。ドラマや映画とは違い、連載漫画は終わりが決まっているわけではないのだ。作者が終わらせようとしても、人気絶頂であれば出版社が終わらせてくれない。仕方なく構想外の続きを書かなければならない。その間に、作者の興味も移るし全く新たな展開が思いつくこともあろう。「あしたのジョー」のような見事なラストシーンを描けることはほとんどないのである。

そう考えると、江川氏にとっても、この映画という1時間45分で物語を終わらせなければいけない、というメディアへの挑戦は、ある意味果たせなかった夢を託せる仕事であり、2001年に連載を終わらせながら2006年になってこの映画を世に出した原動力にもなっているような気がする。原作者自らストーリーを再構成し、漫画では村上が主人公だったのだが映画版では水野遥を主人公に据えるなど、大胆なアレンジがなされている。実は、作者が一番この作品で言いたかったことがこの映画版に込められているのではないかと思う。恋愛論を語る、これこそが作者のこの作品に込めた思いなのではないだろうか?

僕がリアルにアドバイスするならば、村上には「その時期に恋しちゃダメだろ〜」と言いたい。女は恋愛を原動力にできるが、男は恋愛するとそれに夢中になって他のことが手につかなくなるのである。そのたった一つの失敗が、彼らのその後の人生を狂わせてしまうのだ。たった一年のことだ。たった一年待てばよかったのだ。
僕自身、大学受験の高校3年の時に恋をした。昼も夜もその娘のことばかり考えて、全く勉強は手につかなかった。そこで、決着をつけることにした。告白して、振られたら受験に専念、うまくいったら、浪人してもいいや、という覚悟だった。
結果は振られ、1ヶ月間落ち込んで何も手につかなかったがその後立ち直り狂ったように勉強した。1月の1次には間に合わなかったが、2月の私学の試験には間に合った。というわけで今の僕がいるわけだ。
恐らく、その恋がうまくいっていたら、というパラレルワールドは想像だにしないが、僕は全く違う人生を歩んでいたに違いない。
その、まさにパラレルワールドを江川氏が描いてくれたわけで、僕はついつい村上に感情移入してしまう。大学一年で遥から「子供が欲しい」などと言われ引いてしまう、ってとこまで僕の実体験と重なる(^^;

ところが、この映画自体も妄想オチとなっている。これは作者自身が原作の終わり方に拘ったのか、元々原作からしてこの作品は妄想オチということで構想されていたのか、この辺がイマイチ釈然としない。だが、胎児から精子まで巻き戻っていく描写を見ると、この作品自体の大テーマが妄想の無限ループだったのかもしれない、などと考えたりもする。

各所に酷評が寄せられているが、僕としては以上の様な文章が書ける程観てよかったなと思える作品であった。
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by kenpapa9 | 2008-12-05 05:49 | 雑談

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